気持ちに配慮した介護を
認知症になってしまった高齢者の介護は意思疎通がうまくできないために大変だというイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。確かに完全に意思を通じ合うことは難しいかもしれませんが、だからといって認知症患者の言うことを全て頭ごなしに否定してはなりません。否定から入る介護はそれに関わるすべての人に大きなストレスを強いることになりますし、何より介護者と被介護者が互いを信頼できなくなってしまうからです。
認知症患者の介護において重要なことは、積極的に相手とコミュニケーションを図るというだけではなく、相手を決して否定してはならないということです。認知症になった高齢者は自分でも記憶が抜け落ちていく現実に向かい合って傷つきながら日々を過ごしている人が大半であり、そのような相手を前にして否定的な言動を発してしまうとさらに傷口に塩を塗ることになってしまいかねません。その上で、認知症患者と会話する際には、コミュニケーションの仕方を少しばかり工夫する必要があります。
まず第一に、会話をする場合には相手と目線を合わせるということです。目線が合うと相手を尊重しているということが伝わりますし、相手が何を考えているかも分かりやすくなるためです。その上で、第二に話しかける際はなるべく大きな声でゆっくりと話すということが大切です。認知症患者は高齢であるため耳が遠いケースが少なくありませんし、認知能力が落ちてきているため、早口でまくし立てられても理解しきれないかもしれないのです。この二点を気をつけるだけでも、介護のしやすさは格段に変わってくることでしょう。